僕がアナログシンセの勉強を始める何年も前から、アナログシンセの情報を集めたコユイページを製作されているかたがいらっしゃる。
youtubeのほうでも(denha さんのチャンネル)積極的に活動されてらっしゃって、特に昨年(2008年)の「シンセサイザーフェスタ 2008」前後から、ドラムシンセをいくつか製作されている。 昨年発売になった、国産最後のアナログシンセ、「学研」のSX-150の大ヒットも手伝って、初心者が、SX-150からアナログシンセDIYに足を突っ込んで、氏のドラムシンセご覧になって「ウフフ、やってみようかな」という構図が、もう止めようの無い流れになって、アナログシンセDIY界では、ドラムシンセ嵐がふきあれてるかな?ところが、DIYの定番ともいえる回路、
の下のほう、「schematics」のリンクから回路図を拝見することができるんだけど、現在製造されていない部品名がみえたり、他の、比較的初心者向けの製作記事のページなどをいくつかチェックすると今では、入手が難しい、古典的な部品が使われている。
なんて、大それたことを口にした舌の先が乾く間も無く、アナログシンセDIYerご用達の通販でも有名な、秋月電子通商で、これまで一般に入手の難しかった特殊な部品、「XR-2206」が取り扱われるようになった。
XR-2209は、RJBさんのページに詳しい。pcm1723さんも、RJBさんの記事を受けて、「アナログシンセの VCO ブロック」 というエントリーにまとめられた記事の中で内部動作の解析をされている。また、XR-2206についても、 XR-2206の専用のエントリーを作られて、houshuさんの、「仕様書に出ている内部等価回路にはミスがあるのでは?」という疑問に答えて、仔細に解析された記事のほか、出ないはずの鋸歯状波をひねり出されたりなど、ICの内部を研究された成果を発表されている。
とりあえず、仕様書の図面をみながら、ブレボでサンプルの回路を組み立ててみる。
これで、矩形波は出力される。時期を同じくして、
pcm1723さんやhoushuさんがICの動作を解析されているようで、遠くからの援護が心強い。
仕様書の図面をみながら、ブレボしてみたのだけど、思ったとおり動かない。というか、pcm1723さんが解析されている通りの動作をしているのに、なぜか、三角波だけでない。ブレボに組み立てたとおり、図面を起こしなおしてBBSの方に投稿したら、XR-2206の3番pinの配線が間違えてると、pcm1723さんからご指導いただいた。
単純に僕が仕様書の図面をみまちがって組み立て、間違った組み立てをみて間違った回路図を描き直した、ということだった。この50kのVRの動作は、出力の振幅を定義する抵抗で、バイアスに対して0Ωなら、振幅は0。以降、三角波なら、1kあたり、160mVづつ、振幅を増やすことができる。仕様書4ページ目の大きな表の「Triangle Sine Wave Output」の中のTriangle Amplitude / Sine Wave Amplitude という項目で定義されている数字。その下の数字がどうがんばっても6V以上は触れないことを示している。要するに、37.5k以上の抵抗をつけると、くりっぷしますよ、ということ。
僕のミスは、ここ、Cで交流的にショートしてあるので、言われたとおり、振幅が0V三角波を出していた状態。仕様書の図面のCは、バイアスを作っている、R6と並列に(バイアスから交流分をすてるために)Cを入れなければいけなかった。仕様書がちゃんと読めて、ICの内部動作が分かっていればありえないミス。幸いにして、ICは壊さずに済んだ。
RJBさんの書かれたブログのエントリー、「XR-2209」の中でScott Stitesさんの書かれたXR-2206 Based Voltage Controlled Oscillatorというページが紹介されてる。これは、Thomas henrry氏が出版した書籍に紹介されたVCOを組み立てる記事がで、この中でXR-2209にアンチログ回路をつなげた図面が紹介されている。
これを参考に、アープのVCOに使われていたPNP+NPNマッチドペア式のアンチログ回路を仕込んでみた。なんとなく5オクターブの音域がだせるのだけ確認した。厳密にはNPNとPNP、さらに、R3の熱結合もしなければ、リニアリティの検証とかできないし、実際の組み立てでは、NPNとPNPは適当に選んだ2個を使っており、マッチしたものは使っていない。インピーダンスをあげるために、エミフォロも入れた、指数的に変化したら、ラッキーぐらいに使うつもり。
プロトタイプ1号機の回路図がこちら。蛇の目基板に組み立てる前に、図面を書いては、ブレッドボードに組み立ててみて、一つでも部品点数を減らせるようにまた、図面を書き直して組み立ててを何度か繰り返した。
狙いの周波数を出すのに、R7に4.7M、C2に0.1uFが必要。抵抗を2.2Mにすると、Cはサイズ大き目の0.22uFが必要。基板には、0.22uFのフィルムコンは入らないかもしれない。ただ、4.7Mとかの抵抗とか、5年間のホコリが積もって湿り気を帯びましたーとか、まかり間違えば、基板そのものが持っている抵抗とほとんど一緒。何がおこるか分からない、...というわけで、ぎりぎり2.2Mとと、0.22uFという選択におちついた。(このあたりは、いつもの通り、オッショさんにご指導いただきましたー)
基本的にタイミングを決めるCは、その性能がそのまま発振器の性能になってしまうので漏れ電流が少ないものを選ぶ。
ここは両端の電位の絶対値が1サイクル単位に入れ替わるので極性のあるCは使えない...はずだけど実は試してみたらケミコンなら使えた。タンタルはきっと使えない。(てか、きっと壊れるので試してない)。
実は、どしても、100Hz以下出したいーっと、色々やってるウチにアンチログのTR飛ばしたり、ちびっと、目が汗をかきそうになった。とりあえず、2M以上の抵抗は使わない方向で、さらに、流す電流をケチるべく、アンチログのトランジスタのエミッタに、ダイオードのゲタを履かせてみたりして。
雰囲気こんな感じという図面が引けたら、定数はヘボ大工よろしく、現物あわせ。エレガントさが...とか言ってる割には、やってることは、結構、とほほ。手で考える典型ともいえる。
細かいパネルの操作性、ノブの動きと、パラメーターの変化の具合などを確認するのに、パネルのデザインも平行した。
ケースは、2プラン考えた。YM-150(150X100X40)でpARMとサイズを合わせる方向と、他にとりえも無いので、小さいケースとしてのYM-130(130X90X30)プラン。
特に、写真のYM130プランでは、ロータリースイッチが入らなくて、オシレーターの波形の選択のスイッチはトグルスイッチを2発に分けたけた。プロトタイプ回路では、矩形波にはリングモジュレーションは掛からないので、源波形に矩形波を選んでいるときに、ringのスイッチを入れても、音が何も変わらない。
実は、これ、かなり悩んだポイントの一つ。スイッチを入れると言う行為が音の変化につながらないという操作系は、可能な限り避けたい。打てば響く、シンセ、(いや、ドラムシンセだから、当たり前と言えばアレだけど)なんかやれば、必ずなにか音に変化起こるようなパネル設計がベストだと思う。
ちいさなケースに入れるために、トグルスイッチ2発に分けたけど、この時点では、一回り大きなYM150を使って、オシレーターの波形選択のスイッチには、リングモジュレーションの時は源波形に三角波に自動に切り替わるようにして、リングモジュレーションは、ウエーブフォームの切り替えとして表現するほうがいいな、と思っていた。
たとえば、シンセのフィルタのフリーケンシーのつまみ。操作を誤ると音が消えてしまう。先の波形の選択スイッチ同様、せっかくなんか操作したのに音が変わらないとか、音が消えるとか、やだなと思う。「いままで出てた音を消す、または、聞こえない音を出しているんだ」という解釈に救いを求めつつも、実は自分の中でしっくりきてない。
以前、スタイナーのフィルターを組み立てて、フリーケンシーのつまみを絞りきっても音が消えない設定のパネルを作ったら、大変な不興を買った事がある。音が消ええるところまで絞れなきゃフィルターとはいわねえだろう。いや、その通りなんですけど..。
まあ、ボリュームのつまみだって、絞りゃ、音消えるもんなあ。母さん、母さん、おなかと背中がくっつくぞ!子供の頃、その状況をイメージできなくて、腹が減りすぎると、全身がでんぐり返るのかもしれないと、本気で腹ペコになって目を回したり、シャボン玉を飛ばしたら、屋根まで一緒に飛ぶんじゃないかと、気合入れて吹きすぎて、ちっともシャボン玉は飛ばなかったりとか...。
パネルに並んだ2つのスイッチを見ながら、人の解釈を受け入れることで、少しずつ大人になっていくんだなあ、おりしも、清志郎の訃報が届いたりして、奴はえらかったなー、とか物思いにふけっていたら、オッショさんが、「ダイオード1発で、矩形波に、モジュレーションかけられますよー!」と声を掛けてくださった。
キャリアの矩形波を作っているオープンコレクタに供給する電源を、LFOの矩形波がLowになったときオペアンプに吸い込ませることで、LFOの周期にあわせて、矩形波の振幅を変えるテクニック。本来、リングモジュレーションは掛け算するのだけど、矩形波同士なら排他的論理和を取れば同じことが実現できる、ここではさらに簡易的に論理和を取る方式。リングモジュレーションとは違うけど、似たような音を出すのが狙い。
プロトタイプでの実験を受けて、オッショさんのアイディアをも盛り込んでVerson 1.0に格上げして再検討。PCBレイアウトは、プロトタイプとほぼ同じ。
ブレボでチェックしてたときには気が付かなかったのだけど、矩形波と、三角波の音量差がでかすぎて、ちと使いにくいかも。レベルはどちらも6Vpp程度出るはずにしたのだけど、良く考えたら、オーディオとして聞くのなら、音量は、実効値の比で考えなきゃいけなくて、矩形波、サイン波、三角波、それぞれ、100%、71%、50%ということで、矩形波は三角波に対して1/2でないと同じ音量には聞こえない。
仮公開時にご覧いただいたgenieさんから、こっそり、「C6は、無くてもいいんじゃない」と耳打ちいただいて、検討してみた。>(XR-2206プランに早い時期から、ご支援いただいた。ちなみに、パネルへ張るステッカーは彼が2007年ごろに紹介された「Genieメソッド」を使わせていただいている)
あと大きな問題点、リングモジュレーションしたときの音量ががっくり下がってしまう。これは、XR-2206の仕様書を見なおしてみる。
仕様書7ページ目の一番上右側のグラフ(Normalized Output Amplitudeversus DC Bias at AM Input (Pin 1))から、ここに掛かる電位で、増幅率が連続的に1から-1まで変化することがわかる。-1を掛けるのは符合が変わると言うことで、信号的には位相が反転する。
バイアスポイント(6V)から、-4Vから+4Vまでかわるのだから、2Vから10V(振幅は8V)の電圧を入れると、2Vから6Vに近づくとその振幅が0になり、そこを超えるとさっきと逆の位相の信号がでてくる。ということで、リングモジュレーションの出力を上げるには、モジュレーター(ここではLFO)の出力振幅を増やせばよさそうだ。
で、LFOの出力を見直す。
回路の構造としては、コンパレーターの出力を積分し、その出力をもう一度コンパレーターに戻すという方式。回路的には、U3のアウトが1pinのオペアンプがヒステリシスつきのコンパレーター。このLFOの最大振幅は、R1,R2(XR-01ではR11とR10)で定義されるヒステリシスの敷居値(Vth、VTLとVULで決まる)に依存する。R2を決めて、適当なR1を代入しながら見当をつける。R1とR2を一緒にすれば、目いっぱい振れるけど、そうは問屋が卸さない。実際の組み立てでは、R1はR2の80%ぐらいが上限になる。オペアンプの機種による。ちなみに、R1,R2それぞれ、22k、47kなら、振幅は、3.6V程度
VHと、VLはオペアンプの機種に固有の数字。072を12Vでうごかすのなら、それぞれ、11Vと1V程度。本当は振幅に8Vほしいところだけど、計算どおり7V程度の振幅が出たので、勘弁してやることにする。
ケースに入れる際、R14、R17、R26、D3は、古式ゆかしい真空管アンプの組み立てよろしくパネル面でハンダ付けする。
R14、R26は、それぞれ、LFOの三角波/矩形波のモジュレーション量のMAXを決める。小さくすれば、より揺れる。モジュレーションの深さの設定のVR、10kとの比で決まる。両者に差をつけたのは、どうも矩形波のモジュレーションって、派手。なんか、掛かりすぎで使いにくかったから。バリエーションを付けやすいところなので挑戦してみて欲しい
R17は、Tuneの最低周波数を決める。小さくすれば下がるが下げすぎると、最低音を出しているときにLFOのモジュレーションが掛からなくなる。
C1には、漏れ電流の少ないタンタルコンデンサが使える。また、先にも出たC7,8,9は、微弱なオーディオ信号を通すのでオーディオ用という高級なものを使うといいかもしれない。
この辺まで来ると、組み立てによって、微妙な差が出てくる。そうならないように設計段できっちりやるのが、プロ、メーカー製のすごいところ。
これらの症状が出ない/気にならないように、微妙に増幅率を下げたり、アッテネーターの比率を上げたり、配線の経路を変えてみたり、最終的に必要な振幅が取れるかどうか心配したりが、仕上げの工程、手作りの醍醐味。
「華麗なバチ捌きで演奏したい。だって、シンセとはいえ、パーカッションだしぃ」というムキは、外部センサーを使えるように、センサーの配線は、スイッチ付きのモノジャックを手に入れる。
手に入れたジャックをテスターで当たって確認する。プラグを突っ込み、プラグのグランドと導通がある端子はそのままグランド。チップ部分と導通がある部分はAとする。残りはスイッチ入力のはず。コレをBとする。一度プラグを外し、AとBの間に導通が在るのを確認。プラグが抜けている間は、Bに接続した入力が、Aから出てくる。で、プラグを入れると、AとBの導通は切れる仕掛け。
センサーのVRはAへ、センサ本体はBの端子へハンダ付けすれば、プラグが刺さってなければ、センサのラインはVRへ。プラグを突っ込めば、プラグのチップがVRに接続される。
自分が手に入れた部品を良く見てみる。中身をじっくりみれば、あ、なるほど、ここがコーなって、アーなるのかと言うのが見えてくる。さすがにトランジスタの中を見ても(見えないけど)わかんないけど、この手の部品は、よく見れば動作がイメージできる。手に取って見られる具体的な形を持った部品を、頭の中で抽象化して、回路図のどこにどー当てはまるのかを見極めていくのが、初心者脱出の第1歩だ。さらに、テスターをあてて、自分のイメージした動作になっているかを確認すると、一人前といえる。まれに、まるで、スイッチつきモノラルジャックのフリをしたスイッチなしステレオジャックだったりすることがあるので、騙されないようにする。秋葉原をぶらぶら歩きながら、アー、これ安いー!とか手に入れた部品には良く騙される。だから安かったのかーとか...こうして、ひどい目にあいつつ、一人前になったりして
センサーは、秋月電子通商の「ムラタ圧電スピーカー」と言うものを使った。2こで100円。一つは内蔵用、一つは外部でウッシッシ。オシロを付けてケース本体をぶつと、数Vの電圧がバシっと出る。圧電素子を使う場合に限っては、特に増幅掛ける必要が無いかもしれないぐらいの電圧は出ている。
圧電スピーカーでなく、普通のスピーカーも使える。オリジナルのシンセドラムはパッドの中に、スピーカーが入っているんだそうだ。圧電素子のメカ的な振動だけでなく、太鼓の中に仕込まれたスピーカーが空気の振動も込みで、叩かれた状態を拾うからか、圧電素子より、表現力豊かなのだそうだ。より大きなダイナミックレンジを長時間にわたって表現すると言うことだと思う。
また、これらのオーディオ信号の代わりに、電気パルスを入れるだけでも動作するはず。MIDIで動作せるのに、このテクニックも試してみる予定。
なんてな事をやってたら、阿部さんの掲示板に、興味深い投稿が...
投稿の趣旨とはちょっとずれるんだけど、古いリズムマシンをMIDIで鳴らすためのメカとして、オッショさんが自前開発されたMIDI To Gate Converter。が紹介されていた。ページはこちら。 オッショさんの版はMIDIチャンネルが切り替えられて、8のアイテムをドライブすることができる。僕も、いくつもある頓挫したプロジェクトの中で、似たようなものを開発中だったりしたのだけど、目前のMake: Tokyo Meeting 03に間に合わせるには、コレをりようさせていただくのがベストかもしれない。XR-01 DrumSynth
| メインオシレーター | 50Hz~1.2kHz(3kHz) |
| 波形切り替え | 三角波/矩形波 |
| モジュレーション | 1Hz~350Hz |
| モジュレーション波形 | 三角波/矩形波 |
| スペシャル | RingModulation(三角波)/電源チョッパ(矩形波) |
| 出力インピーダンス | 10k(2Vpp) |
| 電源 | 12V / 20~23mA |
このプロジェクトの発端となった、denha さんが、このプロジェクトを追試くださっただけでなく改造してくださった。
MS20のLFOの回路を元に、三角波と、矩形波だけでなく、鋸歯状波も出るようにされている。
このLFOは、スレッショルド付のコンパレーターと、積分器の組み合わせをループさせて動作しているのだけど、積分器の放電する方向のみ、ダイオードで制限してやるという物。
実はこのプロジェクトの半年ほど前(2008年の秋ごろ)、氏が、アナログステップシーケンサを設計されていた頃、テンポに依存し無いように、それぞれのステップの音符の長さを変更したいという要求に応えて、一切テストして無いのだけど、考えた回路がこちら。これのR5/6を切り替えることで、のぼり鋸と、くだり鋸の波形を出すようにしたようだ。
改造された、図面と、動作中のデモンストレーションははこちら。
このページは、文中にも何度も登場する「阿部さんの掲示板」こと、アナログ震世界のアナログシンセ掲示板に2009年4月9日に投稿させていただいた記事を中心に加筆・修正し、当記事にいただいたコメントも織り込んでまとめなおしました。掲示板にコメントを投稿いただいた皆様には、いつも熱いご指導をいただいております。改めて御礼申し上げます。ありがとうございます。
本文中に何度か登場する「...としての軸がぶれている」は、TVアニメ「さよなら絶望先生」の主題歌で、大槻ケンヂ氏が絶叫する歌のタイトルのもじり。氏のパフォーマンスおよび、三柴理氏のピアノに謹んで敬意を表します。