Good Modulationsはは、叩くと音が出る「電子パーカッション」のキットです。Decay,Sweep,Pitchのツマミを回して音を作ることが出来ます。 回路は、アナログシンセサイザーの要素をごく単純にして組み合わせた形をしています。大変単純なものなので色々欠点もあるのですが、アナログシンセ的な音作りが出来ます。複数組み立てて、組み合わせて、モジュレーションを掛けたりすることで、自作の楽しみを広げていく、そんなキットになりました。
部品点数は40個ちょっと。初心者にはちょっと大変かもしれませんが、専用のPCB(プリント・サーキット・ボード)があるので、回路の組み立てはそんなに難しくないかもしれません。ツマミを4つつけましたので、これの配線が大変です。ケースに組み込むことも考えて、計画を練ってください。スピーカーを直接ドライブできますから、電池をつなげれば、どこでも音が出ます。
このキットには、電源スイッチはありません。遊び終わったら電池をはずしてください。
100聞は一見にしかず。まずはビデオを見て下さい。これはキットをそのまま組み立てたのではなく、ケースに組み込んで、オプションの端子を接続して複数のGoodModulationsを相互に接続できるようにしたものです。この入出力端子をつけるのがデフォルトの改造ともいえますので、ぜひトライしてください。
単体で鳴らして、楽しい。二つ並べて叩くと、もっと楽しい。さらに、この二つを相互に接続することで、一味違う音が出ます。ポーンという音を、もう1台のGood Modulationsで、モジュレーションを掛けることで、シンプルな音が、複雑な音に変化していきます。モジュレーションのスピードを変化させていくことでどんどんすごい事になります。
さらに、自分をモジュレーションしている発信器に対して、自分自身の音でモジュレーションを掛けることで、もう、なんだかよく分からない音になって行きます。強弱で、音色が微妙に変化しているのがわかりますか?このキットの大きなポイントです。
このキットは、パーカッションシンセとして、作りましたが、内部の回路はアナログシンセに使われているVCOや、VCAを簡単にしたものです。上手く改造すれば、アナログシンセ的にメロディーの演奏もできるようになります。ビデオの後半は、CV+GATE信号を受けてアナログシンセ的に鳴らすデモで、リボンコントローラーで演奏しています。
さまざまな音の出る電子楽器的やガジェット、ノイズマシンを作る際の基本ブロックとして改造して使うことで、ちょっと工作に慣れた人も、十分に楽しめると思います。
この回路の主要な部品は、タイマーIC,NE555、パワーアンプIC,LM386を使いました。どちらも。初心者向けの工作では良く使われるこの二つのICですが、ちょっと工夫した使い方をしてみました。
ここでは、NE555のCMOS版、LMC555を使いました。一般的な555を使った発信機は矩形がでますがこの回路では鋸歯状波を生成します。LM386もただのパワーアンプとしてだけでなく、ちょっとひねって、VCA的に使ってみました。
回路図、右下の「OUT」という部分からは、叩いたことによる音量の変化の付いていない信号が出ています。(ピッチはツマミの設定によって変化したものです)。
他のオシレーターを変調するのが狙いの出力ですから、ココにはスピーカーを接続する事はで来ません。
録音するためにスピーカーから出ているのと同じ出力が欲しい場合には、
スピーカーの替わりにラインアウトのジャックをつけます。ジャックをさしたときにスピーカーの音が切れるようなスイッチの入ったジャックを使います。他の改造のアイディアは、また後でこのページに追加していきます。
LMC555 | 1 | U1 | タイマーIC |
LM386 | 1 | U2 | パワーアンプIC |
2SA1015 | 3 | Q1,Q2,Q5 | PNP トランジスタ |
2SK30 | 1 | Q3 | N チャンネル FET |
2SC1815 | 3 | Q4,Q6,Q7 | NPN トランジスタ |
1N4148 | 3 | D1 | スイッチングダイオード | 抵抗 |
10Ω | 1 | R15 | 精度±5%, 1/4W, 茶黒黒金 |
1kΩ | 4 | R5, R7, R8, R13 | 精度±5%, 1/4W, 茶黒赤金 |
4.7kΩ | 2 | R9, R12 | 精度±5%, 1/4W, 黄紫赤金 |
10kΩ | 3 | R6, R14, R17 | 精度±5%, 1/4W, 茶黒橙金 |
22kΩ | 1 | R4 | 精度±5%, 1/4W, 赤赤橙金 |
33kΩ | 3 | R1, R2, R3 | 精度±5%, 1/4W, 橙橙橙金 |
470kΩ | 1 | R11 | 精度±5%, 1/4W, 黄紫黄金 |
1MΩ | 2 | R10, R16 | 精度±5%, 1/4W, 茶黒緑金 |
コンデンサ | |||
2.2nF | 1 | C1 | (222)フィルムコンデンサ |
10nF | 1 | C3 | (103)セラミックコンデンサ |
47nF | 1 | C7 | (473)フィルムコンデンサ |
100nF | 3 | C2, C9, C11 | (104)セラミックコンデンサ |
10μF/16V | 2 | C4, C6 | 電解コンデンサ |
100μF/16V | 2 | C5, C10 | 電解コンデンサ |
220μF/10V | 1 | C8 | 電解コンデンサ |
可変抵抗 | |||
10kΩ(A) | 2 | Sweep<(音の変化量), Volume(音量) | |
100kΩ(A) | 1 | Decay(減衰) | |
100kΩ(B) | 1 | Pitch(音の高さ) | その他 |
スピーカー | 1 | SP1 | 8Ω/0.5W |
圧電ブザー | 1 | BZ1 | 叩く部分に使用 |
電池スナップ | 1 | 006P 電池用 |
キットを動かすには、この他に9Vの電池(006P)が必要です。100円ショップなどで安価なもので十分です。
ハンダ、や、リード線なども必要です。リード線は1mを8cm程度に切り分けて使うとちょうどいいかもしれません。電源ラインには黒と赤、オーディオ信号が流れる部分は茶色、DC信号が流れる部分は橙など、色分けするときれいかもしれません。リード線を色分けしてもしなくても動作は変わりません、組み立て終わった後、配線をチェックする時に分かりやすい工夫をすればいいです。
上手なハンダづけの手順は、「ChipTrick the Kit」のページでチェックしてください。
初心者の方で、上手く行かない場合、80%はろくにメンテされてないひどい半田ごてをソレと気づかずに使っている事があります。はんだ付けの経験があまり無くて何年も放置された半田コテがそんな状態になっている事があります。ハンダを溶かした時、まるで、濡れたようにコテ先にハンダが乗りますか?コロっと丸まってぽろっと落ちる様ではアウトです。
残りの10%は、電子回路用でないハンダを使っている場合。100円均一ショップのDIYコーナー等では、同じハンダでも、電子工作用ではなく、ステンレスなどの金属のロウ付け用の物が同じ棚に並んでいる事があります。「電子回路用ヤニ入りハンダ」を手に入れてください。1mmから0.8mm程度の太さが使い易いでしょう。
最後の10%の人については多くを語りません。何事も練習です。
画像は、キットに付属のプリント基板の部品の配置図です。クリックすることで拡大できます。上の部品リストと見比べて、ミス無く基板に部品を乗せていきます。
ハンダ付けする前に、必要であれば、部品の足を整形します。このキットに入っている部品は微妙に足が曲がっています。ラジオペンチを使って、丁寧に伸ばすと、すんなり基板に入って、綺麗に仕上がります。実は、初心者の場合、ハンダごてより、ラジオペンチの使い方がキモのようです。
トランジスタ(小さな黒いかまぼこで3本足)はNPN、PNP,JFETの3種類があります。電解コンデンサには+/-の極性があります。-側に立派な印が付いていいます。+側は(多くの場合)足が長くなっています。抵抗には向きはありません。組み立てた後に抵抗の値をチェックしやすいように、向きをそろえるのが良いです。R9,R10,R14,R16、R17は、上にトランジスタがかぶるので、後から付け直すのが大変です。つける前によく確認してください。
キットにはICソケットは付属しません。ソケット使うと、Q2は取り付けが苦しいかもしれません。
R9は、寝かせても取り付けられますが、Q2のエミッタの上に入れれば立てても取り付けられます。後で改造のときに立ててつけたほうが有利な場合がありますが、どちらでもOKです。
このキットに限らず、電子回路は必要な部品が必要な場所に収まって初めてちゃんと動くように設計されていますから、部品が足りなかったり、部品の場所が間違っていると、大体動きません。「まあ、良いか」は無し。必ず、設計どおりに部品をPCB上に載せてください。特別な意図がなければ、途中まで組み立てて電池を繋げるのもアウトです。大体動きません。(場合によっては完成する前に壊れます)
基板に部品をハンダ付けするのは、実はそんなに難しくありません。すぐに慣れますし、似たような作業を何度も繰り返すので経験として積み重ねやすいです。ところが、基板とVRを繋げるハンダ付けは、リード線の長さ等で色々に対応しなければいけないし、大体1回上手く行けばOKで、経験を重ねにくい部分です。
このキットのような実験的なものであれば、基板からVRまでの距離は大体一緒でOKなので、リード線はあらかじめ適当な長さに切っておき、被覆を剥き、予備ハンダ(ハンダメッキ)を済ませておきます。
プロフェッショナルは、端子にリード線をからげて落ちないようにして、ばらばらにならないようにハンダづけもしておくような作り方をします。少なくとも、引っ張ったら取れるようではアウトですが、初心者は端子にハンダでケーブルが糊付けされたような状態(チョン付けといわれます)で十分です。
図は基板と、VRの接続例です。クリックすれば拡大できます。このままでなくてもOKです。回路図も良く見て、あ、なるほど、ココは共通でいけるのかと、判断しながら配線してください。VRの10k(A)の3番(ボリュームの端子番号はこの写真で確認する)についてるマークはダイオードです。ボリューム側がカソード(マークの付いたほうです)になります。
VRのグランドライン、横に並ぶ部分、VRのひとつの端子に2本のリード線のハンダ付けが難しいポイント。練習して経験をつむしかないです。一度に2本の線をはんだ付けするのがいいでしょう。
とりあえず、動作確認の為にバラックで組む場合は、VRの軸を洗濯ばさみではさみ、ころころ転がらない様にすると上手に出来ます。ケースに入れるつもりだけど、小さなケースの中にごてを入れるのが難しい場合は迷わず外で済ませてから丸ごと組み込みます。VRの大体の場所を(位置関係)を決めてセロテープで止めて動かないようにするなど、各自で工夫してください。
何年もやっている人たちでもミスるポイントをひとつ。。デザート(一番簡単そうな電池の配線)は一番最後にしようと思うのが自然な流れですが、一番最後は、気が緩んでミスる確率がグンとあがります。まさに食事の支度を終え、「いただきます」の寸前にちゃぶ台をひっくり返すも同然。電池で稼動させるメカで、電池を逆さにつけて壊れるケースはまれですが、回路にも寄ります。出来るなら電源の配線は一番最初にすることをお勧めします。
無事音はでましたか?さて、ココからが本番です。改造をして見ましょう。まずはケースに入れるのはいかがでしょうか。 ココでは以下のポイントを紹介します。
データは、SVG形式です。Incspaceというフリーソフトで編集することが出来ます。原寸大で印刷し、ケースにセロテープで貼り付け絵の上からポンチを(プラスチックですから軽く)打って、穴を空けます。ロゴはおまけ。何かに活用ください。
ケースへの穴あけは、はんだ付けとはまったく違うテクニックが必要です。これも練習あるのみ。僕もケースを買うときはミスることを考えて(1000円以下のものなら)いつも2つ買います。秋葉原への電車賃や、通販の送料を考えると、千円以下ならもうひとつ予備を買っておいたほうがお得になります。まあ、ミスらないのが一番良いのはともかくですが...
MTM07(2011/12/03-04)で公開したデモ版のケースのレタリングは、瀬古さんがシルクスクリーンで印刷されました。もう、完全にハンダ付けとは世界が違うテクニックです。さまざまな分野の色々な技法のが集まってひとつのプロダクツが完成に向かっていきます。
僕はステッカーシートを使っています。プリンターで出力できて、色々な色が使えるのが魅力です。
電源スイッチと、パイロットランプの回路図です。LEDに直列の抵抗には値が入っていません。一緒に簡単な設計をやってみましょう。
回路には9Vの電池と電源スイッチ、抵抗とLEDがあります。経験的に「LEDを光らせるには電池をつなげれば良い」のは分かると思います。これは、本質的には、「LEDは電流を流せば光る」のです。LEDはたまたま光りはしますが、本質的な動作はダイオードです。順方向には電流を流し、逆方向には流しません。図面を見ればわかるとおり、順方向に電流が流れていますから、直列の抵抗がなかった場合、ダイオードは、電池から供給される電流を可能な限り流せるだけ流します。この電流がダイオードの定格を超えればダイオードは焼き切れます。そうならないように抵抗を直列に入れたのがこの回路です。
一般にダイオードが正常に動いているとき(発光ダイオードならキチンと光っているとき)アノードとカソードの間には一定の電位差が出ます。順方向電圧といい、規格表では、Vfと表記されることが多いようです。スイッチングダイオードなどでは、0.6V程度、赤LEDなら2Vとちょっと大きくなり、青色LEDでは3V程度あるものもあります。
ここでは、ダイオードと抵抗が直列になっていますから、トータルで9V掛かるのであれば、LEDには2V、抵抗には(9V-2V=)7V掛かることになります。電池から掛かる9Vは、抵抗とLEDで分圧されますが、電流は、LEDにも抵抗にも同じだけ流れますから、抵抗に7Vの電位差が出れば回路として成立することになります。
LEDをどれくらいの明るさで光らせるかは、LEDに流す電流で決まります。最近の高輝度タイプのLEDでは、10mAも流せばまぶしいほどです。5mA程度で十分かもしれません。同じ電流が抵抗にも流れますから、電圧と電流が決まれば「オームの法則」から抵抗値が計算できます。
電池は、回路が動けば動いただけ、消費してしまい、電圧が下がってきます。ACアダプタをつける改造はいかがでしょう?
回路図を良く見てください。9VDCというのがACアダプタジャックです。スイッチつきジャックを手に入れてよく見てみてください。
ジャックを上の棒が、センターのピンになります。下は、ベロの部分と、それに矢印が付いた記号になっています。
ベロは、ACアダプタの周りのリングの部分に接触します。ここが電源のマイナス(グランド)になります。
矢印はベロが動くと外れるスイッチになっています。ジャックにプラグが入ると、さっきまでベロに接触していた部分が外れるわけです。
ここに電池のマイナスを接続しておけば、ジャックが刺さっていなければ、電池のマイナスはベロを経由してグランドに落ちます。また、ジャックが刺さると、電池のマイナスはベロから離れ、何処にも接続されなくなり、スイッチが切れますが、ジャックが刺さっているので、電池の替わりにACアダプタから電流が流れるわけです。
あとは、電源スイッチを経由して、LEDを光らせて、回路全体を動かします。
音の高さを換えるツマミは、まわす確度に比例して高くなる電圧を出しています。これにあわせて周波数を電圧に比例して高くするような回路にすると、音の高さが低い時にはすっと高い音になってしまい、音の高さが高くなってくるとあまり変化が感じないという、ドレミを無視した、わかりにくい変化になります。
音楽的に1オクターブ音の高さが変化すると、周波数は2倍になります。次のオクターブの周波数はさらに2倍になります。最初の周波数から見ると4倍になります。オクターブが変わるごとに2倍ずつ変化していきます。人の耳には、ドレミファ...と直線的に変化しているように聞こえますが、周波数的には指数的に変化しているとこになります。
リニアな電圧の変化を指数的に変化するように工夫したのが、Q1、Q2を使った、簡易的な指数変換回路です。(アンチログ回路とか、エクスポーネンシャル回路といわれます)
多くの電子回路に使われているトランジスタ、実は温度の変化に大変敏感な素子で、温度の変化で微妙に動作が変化します。音をだしながら、Q2を暖めてみてください。指で触るだけで音の高さが変わります。次にQ1を暖めてみてください。今度は音の高さが逆に変化します。ここでは温度の変化でシーソーのように動く2つのトランジスタが温度変化を同時に受ける様にして、温度が変化してもお互いがお互いの動作のズレを相殺します。
パワーアンプなどのような電流をたくさん流す回路では、流れた電流が自分を暖め、その為に電流が流れやすくなり、さらに自分自身の温度を上げるという状態になり最終的には自分自身による発熱に耐え切れなくなって焼ききれる事もあります。自分の発熱で自分のを壊すまで温度を上げることから、熱暴走と呼ばれます。
この回路ではトランジスタが焼ききれるほどの電流は流れませんが、動作によって微妙に音の高さが微妙に変化していきます。
トランジスタは、ベースからエミッタに電流を流すと、その百倍ぐらいの電流がコレクタからエミッタに流れるという仕掛けです。 また、キットに入っているピエゾ素子、実は、電子ブザーなので、電流を振動に換える素子なのですが、ここでは逆に使って、振動を電流に変換する素子として使っています。
ピエゾが発電するほんのちびっとの電流をトランジスタのベースに入れることで、コレクタからエミッタにそれなりの電流が流します。
以下、このページの上のほうのGoodModurationsの回路図を見ながら読んでください。
最初のQ4の動作はピエゾ素子からくる電流をそれなりの電流に変換するのが狙いです。ここに使っているトランジスタは100倍ぐらいの増幅率を期待していますが、さらにもう一つ100倍程度の増幅率を持ったトランジスタを重ねることで100X100 の増幅率にしています。(増幅率はトランジスタの銘柄だけでなくそれぞれの固体で微妙に違います。)
増幅率は掛け算になるので、もう1万倍とかになるとほとんどスイッチも同然です。微妙な変化ではなく、電流が流れているか、流れていないかの2値、(スイッチ)になっています。実際は、ピエゾ出力インピーダンスが高いので、それに合わせて入力インピーダンスをあげるためにトランジスタを2発重ねています。(ダーリントン接続といいます)
ここでスイッチされた電流は、C6を充電します。空っぽのC(コンデンサ)になんのためらい(抵抗)もなく電気を突っ込むのでほぼ即時にカーンと充電されます。アタックの部分です。
さて、一般に、トランジスタのベースはちょっとしか電流を吸い込みません。(コレクタはがっぽり吸い込みます。それぞれ、エミッタに流れて行きます)ベースは電流が流れにくいともいえます。「インピーダンスが高い」とも言えます。
ここで、Q4のベースに電流が流れなければ、Q4はコレクタから電流を流しません。C6への電流の供給がストップするとQ6のベースはあまり電流を吸い込まない(インピーダンスが高い)ので、C6は充電された電位を保ちます。ここではコンデンサの性能(コンデンサ自体が抵抗成分を持っていることがあります)もりますし、ほんのちょっととは言え、Q6のベースも電流をも吸い出すので、いつまでもは持ちません。
ここで、R17とボリュームで積極的に放電するわけです。ガンっと充電されたC6は、この抵抗のセットで徐々に放電されていきます。抵抗値が小さければ、早く放電されます。ディケイのVRは、こうしてタイミングを制御しています。
C6が放電していくとここに見える電圧も下がっていきます。Q6は、ベース電流の変化をこっそり、というか、チョビットしか吸い込まないようにしながらも、チェックしていて、コレクタに流れる電流を変えます。これをエミッタにつけた抵抗で電圧の変化に変換してやれば、C6の電位の変化を、外に出す事ができます。Q6はエミッタフォロワとも言います。
というわけで、Q4にスイッチを付けて動かそうと思ったら、グランドではなく、10k程度の抵抗を介して電源につなげてください。ピエゾが発電する替わりに、電源から電流を供給する形です。
Q4のエミッタには、R17 と、ディケイのボリューム100kが付いています。ココにたとえば9V の電位差が欲しいときにはどれだけの電流が必要でしょう?オームの法則を使って計算してください。電流は、電圧/抵抗ですから、9V/(100k+10k)= 0.082mAとなります。Q4,Q5のセットで(ベース電流を)1万倍して0.1mAあればOK。というわけで、Q4のベースには、0.1mAの1万分の1がぎりぎり動く数字になります。9Vの電位差に10kの抵抗があるなら、0.9mA電流がながれます。ここでは、もう、なにをどう間違っても確実にQ4を動かせる電流がながせるわけです。
EGのバリエーションとして、ピエゾ素子の替わりにスイッチを付けて音が出るような改造を検討してみます。
GoodModurationsのEGの回路は、ピエゾの微弱な信号をトリガーとしています。ピエゾ素子のたたき具合で音の出かたが変わるのは楽しいのですが、ここでは、外部からのコントロールをし易いようにスイッチを押せば音が出るような改造をして見ます。
スイッチで音の出方を決定する要素としてのEGの回路のバリエーションを検討してみます。
EGはエンベロープジェネレーターの略です。立派なシンセでは、ADSRともいわれます。アタック・ディケイ・サスティーン・リリースの4つのパラメーターを頭文字を並べたものですが、正式にはエンベロープジェネレーターです。
まずはシンプルなゲートを作ってみます。
回路図は、抵抗を一本通したスイッチをピエゾ素子の替わりにつけるだけ。
このゲートはスイッチが押されている間オン。スイッチを離した瞬間にオフになります。
ピエゾ素子は衝撃を与えた時に瞬間だけピークがでてオンになりますが、このゲート回路だと、押している間、ずーっと音がでる事になり、ディケイのツマミは、手を離したところから動作を始めるので、シンセで言えばリリースの動作になります。
パーカッシブな音が欲しいのなら、叩いた瞬間から、ディケイが始まる(ピエゾ素子を使ったオリジナルの回路の動作)ようにするには、スイッチを押したときに瞬間だけオンにすればよさそうです。ここでは、ゲートをトリガーに変換する回路を考えてみました。瞬間の長さは、C101で変えます。ゲート生成回路(といっても抵抗と、スイッチだけですが)と、GoodModurationsの間にこのトリガーへの変換回路を入れれば、スイッチを押した瞬間からリリースがはじまりますので、動作的にはディケイに見えます。
EGの出力は右の図のようになります。Release Typeは、ただ、GoodModurationsに、Gate回路をつけたとき。追加のトリガー変換をいれれば、DecayTypeになります。ディケイタイプのEGの欠点は、音の出始めの部分の演出は楽しいのだけど、ゲートを押し続けているのだから音は出て欲しいのに、ディケイタイムが終わると成り行きで音も止まってしまう点。
一方、リリースタイプは、音の出始めは、まあ、普通に出るだけで、ちょっと普通。ただ、ゲートが出ている間は音が消えないところ。
たとえば、このトリガー変換回路をスキップするようなスイッチを追加すれば、ディケイだけのEGと、リリースのみのEGに機能を切り替える事ができます。作りたい音によって、この2種類を切り替えられたら、使いではあるかもしれません。
さらに応用編。基本的には、ディケイのみのEGとして動くのだけど、ゲートが切れたときに、音を止めたい。上記のディケイタイプは、何処で音を止めようとしたかに関係なく、ディケイタイムで決めただけの時間音がでることになります。(再アタックをかけることはできます)
演奏の内容によっては、リリースが長すぎるように聞こえるかもしれません。
たとえば、リボコンで演奏するような場合、十分に長いディケイタイムで鳴らしたいけど、ゲートがきれたときに、滑らかに変化するディケイの尻尾の部分を切りたい。と言うような要求があるかもしれません。
このバリエーションでは、ゲートが切れたときに、ディケイのコントロールの抵抗を0Ωにすることで、ディケイタイムを強制終了します。
この回路は、ゲートが切れたときに、ディケイの設定のボリュームをQ102でショートするように動作します。Q102のベースに接続されているR105をグランドに落とすようなスイッチを追加してQ102はオフのまま動かないモードを追加すれば、上記のノーマルなディケイのみEGとしてもリリースも残こるEGに切り替える事もできます。
このまま、GoodModurationsに組み込むのは難しいかもしれません。別の基板に組立てて、基板へケーブルで接続するような方たちを考えたほうが良いでしょう。
内蔵されたEGを無効にしてゲート入力とし、MIDI-CVなどを使って、CV+GATE でコントロールする音源に改造してみます。回路図はこちら。
このキットは、まず音が出る事を目標にしましたので、使っているうウチに変化する、音程の変化やズレは気にしていません。
ただ、MIDIを接続したりして鍵盤で鳴らすようにすると、微妙なずれが気になると思います。ドレミと引いたつもりが、ドファラとなったら、いやかもしれません。ドミソと弾いたらシレファでもいやです。思いがけない音程を楽しむのでなければ、アウトです。また、せっかくチューニングをあわせても、電池が減っただけで、ずれるのも困ります。(このボードはオシレーターが一つですから、MIDIを接続するしかけを追加しても和音は出ません、単音です)
この改造は、そうした、電源の変化に強くするための改造です。
LM386を使ったパワーアンプ部分は、電源の変化やズレに比較的強く、ちょっと、電池が減ってきても、ちょっと音量が変化する程度で大きな問題なく動作しますが、温度の微妙な変化にも変動してしまうオシレーター部分にとって電源の変動は大問題です。
そこで、オシレーターに使う電源については、三端子レギュレーターで安定化させ、あまり電源の安定が要求されない、さらに、できるだけ、高い電圧が欲しい部分は電池から直接電圧を取れるようにします。
回路図的には大改造。いろいろなところが変わっていますが、一番大事なの修正は、写真のように三端子レギュレーターを追加するところです。入力と出力の足の間のパターンをカットしてここに、3端子レギュレーターをはさむ形です。
EGの機能ははずしてしまうので、C6は使いません。VCOの電源圧が変わるので適当な音域が発生できるように、R2, 3, 6, 12を変更します。また、R8は抵抗ではなく、2.5V のツエナダイオードに付け替えます。
R14の横の4.7nは、生の鋸歯状波が耳に痛い人の為の軽いフィルターです。三端子レギュレーター同様基板の裏から追加します。好みででつけます。
このフィルターの替わりに、VCFを追加すれば、シンセっぽくなりそうです。
回路図では三端子レギュレーターの前後にパスコンが付いていますが、実際は、この場所であればたまたま近所にCがあるので、不要です。外に用意した基板などに三端子レギュレーターを乗せて電源を再供給するような構成を考える場合には追加してください。
この定数で、大体1V/1OCT程度のスパンになります。外部のCV生成の回路で微妙なスパンを設定してください。温度保証は完全ではありませんので、温度がかわれば、スパンもずれます。まあ、丁寧にチューニングすれば1曲分ぐらいはちゃんと演奏できるかもぐらいの精度ですが、実際鍵盤で演奏する楽しさは堪能できるかもしれません。