シンセサイザクロニクルの発売に先立って、SX-150を開発されたGanさんを中心に催された「SX-150お披露目座談会」には、僕がアナログシンセの師と仰ぐMASA921さんも参加された。
僕あたりが、お土産にいただいて帰ったSX-150をどうしようと眺めている間に、さまざまな改造プランを矢継ぎ早に発表され、「さすが、我が師」!を連発の毎日。
この中に、サーキットベンディングではなく、追加で、アナログシーケンサを作る、というのがあった。SX-150と組み合わせて鳴らすために最適化されたアナログシーケンサで、その名も、SQ-150。コントロールも可能な限りシンプルに工夫されたもので、早速、追試させていただいた。氏のページは以下。
色々な改造プランが紹介されている中から、「SQ-150アナログシーケンサー」の回路を、何の工夫もなくそのまま組みたてた。その代わり、ケースにはこだわった。スタート/ストップのボタンがないのなら、どこからスタートしても一緒ジャン!をそのまま実現したUFOスタイル。
ケースのアイディアのオリジナルは、houshuさんのMOSular。
深さが足りなくて、基板もケースの中に入れるにはもう一工夫、かまさなきゃいけないなあと思いつつ、無理やり突っ込んだのは、CD-Rのメディア(10枚セットのもの)が入っていたケース。
太陽誘電のCD-Rのケースが表にでこぼこが少なく、ケースに使うには良い感じかもしれない。乳白色で中が見えるので、自分の好きなデザインを紙にプリントアウトして仕込むことができる。
PCBを床下に沈めなきゃいけないので、床に大穴を開け、さらにその下に床として、CDのプラケースを切って貼り付けた。
回路についてはおっしょさんにお任せで、なんの心配もなくデザイン先行で加工してたら、グライドのつまみをつけるのを忘れた。このまま行っちゃうつもりだったのだけど、試しに、ケーブルを外に出してVRを裸でつけて鳴らしてみたら効果絶大。つけなきゃソンだ、ということで、デザインしなおしたりして。
可能な限りコントロールを絞ったSX-150とセットで使う前提で、専用シーケンサとしても、ガンガンパラメーターが省略されていて、音程を決める8つのノブ、テンポを決めるノブだけ。ポルタメントの回路がオプションとなっている。
写真はプロトタイプで、最終版とはちょっと見た目は違う。プロトタイプも、最終版も、オプションとかけちな事言わずにポルタメントはデフォルトで組み込んである。使わない場合は基板のコネクタの部分で、Glide1、Glide2を裏で接続してしまえばOK。
おっしょさんの回路図はこちら。以下、僕の作業用の図面ほか。
パネルデザインパターン例 白状するまでもないけど、パネルデザインは苦手な分野。もし、素敵なデザインがありましたら、ご紹介ください。(いや、結構マジ!)
まずは、電子工作一般という視点で、動かないときのチェックポイントをいくつか紹介する。
ICには可能な限りICソケットを使う。組み立てたら、ICをささないまま電源を入れてICの電源ピンの電圧を測ってみる。SQ-150の場合なら、TC4584は7ピンがグランド。14ピンがVCC(ここではシンセからくる5V)TC4520、TC4051はそれぞれ、8ピンがグランド、16ピンがVCC。
テスターのレンジを直流5V以上15V以下の程度のレンジに合わせる。想定する電圧が5Vと分かっているのだから、可能な限り5Vに近い5V以上のレンジに合わせる。
慣れてきたら、グランドポイントはわに口クリップで、テスターの黒リードに噛み付かせておいて赤リードをピンを当てるようにする。
それぞれ、思った通りの電圧が出ていたらICを刺す。もちろん電源を切ってから。ICの向きは大丈夫?基板デザインを考えるとき、この手のミスを防ぐのに、ICの向きはそろえるのが普通だけど、名刺基板サイズにパターンを押し込むために、無理なデザインをすることもある。(僕のPCB例は悪いパターン)ICの種類は大丈夫?同じサイズのICを違う場所に突っ込むというミスも、結構ある。
このほか、一般論は、こちらにも紹介してある。
C-MOSのICを使った回路では、一つのパッケージの中に同じ動作をするユニットが複数含まれていることがある。この工作の場合も、TC4584、TC4520は、それぞれ6つ、2つ、同じユニットが同一IC内に入っている。このうち、TC4584は2つ、TC4520は1つしか使っていない。こんな場合、使わずにあまらせた素子は、放って置くと、すねて暴れることがある。
これは、入力ピンが、5Vでも0Vでもない宙ぶらりんな状態でも、出力は白黒はっきりさせようと(デジタルだからね)バタバタ暴れるという感じ。このあおりを食って電源がずっこけて回路全体が不安定な動作に陥る事もある。
TC4584に関して考えると、入力をHiにしたほうが、電力消費しなくていいじゃんと思われるかもしれないが、実際、C-MOSという素子は、状態が変化するときに大きな電力を消費する。状態が決まれば、ほとんど電流は流れない。テスターを当てると、テスターの内部抵抗を負荷として電流が流れ、5Vを見る事になるけど、オープンにしておいたら、(負荷が無ければ)電流は流れようが無い。むしろ、他の種類のC-MOSのICもひっくるめて、「あまった入力ピンは、グランドへと」、一般化できるほうが、ミスを少なくする上ではポイントだ。
さて、SQ-150にはクリティカルな部分は、ほとんど無い。あるとすれば、トランジスタ2発を組み合わせたエミフォロ部分。ごく簡単に、特性をチェックしたグラフがこれ。縦軸が入力、横が出力。0V周辺、0.2V程度のズレはあるけど、かなりのリニアリティが出ている。
このほか、C-MOSに関する上記注意事項をクリアすれば、問題なく動く。
いくつかチェック項目を挙げておくと、この回路はクロックの数を数えて、マルチプレクサを動かすというものなので、まずはクロックが出ているかどうかを見たい。僕の図面のU1a(TC4584の2ピン)にテスターを当ててみる。スピードに応じて、5V、0Vがパラパラと切り替わるはず。これが大前提。
もし、変化していないようなら、C1の1uFの極性が逆になってないかがチェックポイント。VRをまわしてもスピードが変わらないとか、つまみを(左に)絞ると早くなっちゃうとかな場合はVRの配線を見直す。抵抗値が小さくなるほうがスピードは上がる。
こうして生成されたクロックを数えるのは、TC4520。数えた結果はU2aのQ0-Q2(11..13ピン)までに出るはず。テスターを当ててみると、オンオフの周期は、11ピンは元のクロックと同じスピードで、12ピンは2倍、13ピンは4倍の時間をかけて、オンオフを繰り返すはず。コレを受けて、4051のX0(13ピン)から順に、X7までオンになり、VRで設定した電位が出力される。
回路の動作が分かれば、チェックするポイントも見えてくるはず。オッショさんの回路説明もじっくり検討してみる。
同じC-MOSとはいえ、TC74HC4051と、TC4051は電源圧と、扱える電圧の最大値が違う別のICだ。74XXシリーズは、電源は5V、通せる電圧も、5Vまで。一方、TC4051は、3Vから18Vまでの電源圧を使うことができて、スイッチできる電位もこのICに掛けている電源圧付近までということになる。SQ-150に限れば、電源圧は5Vを想定しているのでどちらのICも使える。SQ-150専用なら、TC74HC4051でも問題はない。
せっかくコンパクトで単体でも楽しめるシンセなのだから、専用アナログシーケンサも取り外できるようになにかコネクタで接続するように考えたのだけど、なかなか、最適なコネクタがない。
GND、5V、CV、Trigerの4本を引き出すのだから、ビデオのS端子のケーブルが使う、MINI-DIN-4ピンのコネクタはどうかしら、と用意したのだけど、思いがけず、ケースに取り付けるねじ穴がでかくなって、無理。シンセから5Vが出ているので、端子がむき出しはちょっといやかな、それなりにケース/カバーが付いたものがいいなあとか色々見てみたんだけど、結局、いつも使っている広瀬のコネクタのL字タイプを基板に乗せ、それに、10mmのアングル(2mm厚)を6mm程度に切って、3mmのねじをタップした金具をつけて、コネクタを作った。
アルミのL字アングルも先に6mmに切ってしまっては、穴があけられない。作業手順が問題になる。
SX-150側の四角い穴は、ヤスリで削るにはすでに、身が詰まっているシンセの中を突っついてしまうので、3mmの丸穴を開けて、カッターで少しずつ削ったりして、すげー大変!
さらに、このサイズできちんとした精度の加工は絶望的。組みあがったオリジナルのコネクタをケースに当てて、現物あわせでの加工が必要になるのだけど、ケースの中側に工具が入らない。
適当な厚紙で型紙を作った。これにコネクタをつける穴を開け、こちらに現物あわせの穴をマーキングし、それをテンプレートとして、SX-150にケガキを入れる。6本ぐらいまでは、ケースの外に線を引き出すようなコネクタとしては有効なテクニックかもしれない。
配線は、回路図を参考にして、「波形変換追加」のページの、基板からの引き出し先を参考にする。
なんか、回路を工夫したり、定数の計算をしたりとかやってる時間より、この手の工作のテクニックの開発のほうに時間かかってるような気がしてならない。(これはこれで、たのしーけどね)
リボンコントローラーの「SX-150との接続」も参照の事。
これ、シーケンサはシーケンサでもアナログ。今時、一般にシーケンサで連想されるのは、Cubaseとか、パソコンベースのもの。これらはMIDIなどの情報をたんまりためこむことができるけど、このシーケンサは、並べられたつまみの分だけの音程を順番に鳴らすだけのものだ。鳴らすスピードは変えることができる。イメージとしては、延々とアルペジオを演奏するためのメカともいえる。
四の五の言ってねーで、まずは組み立ててみろ、触ってみてそれからだ、な、つもりで組み立ててみた。この手の音楽、なるべく距離を置いてきたのだけど、実際自分でやってみるとやっぱ、ハンパじゃなくムズイ。
音を出すだけならば、電源を入れるだけ。出てきた音を自分で楽しむ分にはOK。ただ、これを人に聞いてもらえるようなものにするのは、ちとムズイ。
一般に、「イメージトレーニング」という、「"かく在りたい自分"の姿を目の裏に思い描き、それをトレースすることで、実現させていく」というメソッドがある。運動選手や、ダンサーなど、肉体派系には有効らしくて、それなりの成果があるといううわさを聞く。シーケンス・ミュージックでは、この技法を実践するのがとても難しい。
つまみをいじるという動作と出てきた音を聞きながら最終的な音色を決め、イメージに近づけつつ、さらにトータルでストーリーを展開していく。まさに、ライブ・フィードバックな音楽技法といえる。いやー、やってみたらムズイのよ、ハナヂ出ちゃうし。
いま、アナログシンセを世に問う「アナログクロニクル」に、SX-150専用アナログシーケンサ「SQ-150」は、「コアなアナログシンセ自作マニア」の提示する回答の一つのとして、有効であると信じる。